世界で最高の誕生日プレゼント

母子手帳

5月7日、母から誕生日プレゼントが宅急便で届いた。

昼間は荷物を受け取れなかったので、夜、コンビニに取りに行った。

薄っぺたい封書だった。ベッドに寝転びながら開けてみる。

図書カードと、古ぼけた一冊の母子手帳が入っていた。

母子手帳

昔ながらのフォント。薄っぺらいペラペラの紙。

昭和が伝わってくる。

出産の状態

分娩所要時間 8時間。知らなかった。

そんなにかかって出てきたんだ、僕は。

どれだけ大変だったろう、母は。

何を思って待っていたんだろう、父は。

出産時の児の状態

体重3360g 身長53cm

胸囲33cm 頭囲33.5cm

こんなにちっちゃかったんだ、自分は。

片手に乗るくらいの大きさ、重さ。

それが、僕の人生の始まりだったんだ。

乳児期の経過

この数字を、母は、

どんな気持ちで眺めていたんだろうか。

どんな思いで僕を抱いていたんだろうか。

そんなことを考えながら、母子手帳を枕元に置いて、寝た。


翌朝、スポーツジムでトレーニングの後、サウナでこのことを思い返していた。

そのときふと、母が、いつも言っていた言葉を思い出した。

「わたしは、いつでも元ちゃんの味方です。」

「どんなことがあっても元の味方です。」

そのとき、初めて、この言葉の意味がわかった。

いつも味方です、と言い続けてくれた、母の言葉の意味がわかった。

それは、母からの愛だった。

愛という言葉を、文字を、今まで実はよくわかっていなかった。

頭ではわかる。辞書をひいても意味はわかる。

エーリッヒ・フロムを読んでも、書いてあることはわかる。

でも、わかってなかった。

わかってなかったから、今まで、愛という言葉を、

使えなかった。

使うのが恥ずかしかった。

けれど、そんなんじゃない、愛するということが、突然、

ふってわいたように、心の中に降りてきた。同時に

愛は、男女の性とは関係がないことを知った。

愛は、戦争の反対であることを知った。

世の中で言われる愛には、本物と偽物がごっちゃになっていることを知った。

自分の感じ方が正しいのかどうかよくわらかないけれど、

生まれてはじめて、愛とはこういうものではないかという、確信に近い仮説を、持つことができた。

45年もかかった。

でも、感じることができてよかった、うれしかった。本当に。

僕はひとり、サウナの中で泣いた。

母に感謝して泣いた。

昭和47年5月7日、僕は人生の始まりを授かった。

そして、

平成30年5月7日、僕は母から再び、人生の始まりを授かった。

母よ、望むときまで、元気に長生きしてほしい。

元気長生きのやり方は、僕が教えてあげるから。

僕を産んでくれて、僕を愛してくれて、本当にありがとう。

僕も、あなたを愛しています。

清水元承